熊本県には、「水の国」と「火の国」という、一見矛盾する2つの異名があることをご存知でしょうか?
今回は、「水の国」にフォーカスしてご紹介します。
(►「火の国」の由来はこちら)
熊本の歴史や風景に溶け込んだ水物語。
「水の国」を知っていただいた後には、今よりもっと熊本のことを好きになっていただけると思います。
それでは、ちょこっと熊本を知る旅へ行ってらっしゃい!
目次
1. なぜ熊本は「水の国」と呼ばれるの?
・豊富な水資源
・蛇口をひねれば、天然のミネラルウォーター!
2. 美味しい水の3つの要因
・阿蘇の自然のめぐみ
・降雨の多さ
・加藤清正公と地下水をつくる「かん養域」
3. 豊かな水を守るために
4.「水の国 熊本」が生んだ美味しいもの
1. なぜ熊本は「水の国」と呼ばれるの?
豊富な水資源
熊本には1,000か所以上の湧水があるといわれています。
環境省が選定する「昭和の名水百選」に4か所、「平成の名水百選」に4か所、熊本県から合計8か所が選定され、その数は富山県と並んで全国一となっています。
熊本市内では、以下2か所が「平成の名水百選」に選ばれています。
・「水前寺江津湖湧水群」
市民憩いの場「江津湖」、細川公のお茶屋が造られ、後に大名庭園となった「水前寺成趣園」、熊本市全体の水道水の約1/4を賄う本市最大の水源地である「健軍水源地」がある
・「金峰山湧水群」
金峰山系一帯に点在する20か所の湧水群を指す。
明治天皇の九州巡幸の際に水を献上した「天水湖」、宮本武蔵が「五輪書」を著した霊巌洞がある「雲巌禅寺」などがある。
蛇口をひねれば、天然のミネラルウォーター!
熊本市には他都市のようなダムや浄水場はありません。
人口約74万人の熊本市民が使用する全ての水は、井戸から汲み上げた清らかな地下水に、法律で定められた最低量の塩素を加える程度の処理をした「天然の地下水」で賄われています。
これは人口50万人以上の都市としては日本唯一であり、世界でも稀少な「地下水都市」です。
また、その水質も素晴らしく、長い年月をかけて地下でろ過された水には健康を保つのに不可欠なカルシウムやカリウムなどのミネラル成分がバランス良く含まれており、健康やおいしさに貢献しています。
さらに、血管の柔軟性を保つ効果があるとされるケイ素も豊富に含んでいます。
まさに蛇口をひねれば “ 天然のミネラルウォーターが流れ出る ” そんな恵まれた環境が日常の生活に溶け込んでいるのです。
2. 美味しい水の3つの要因
天然のミネラルウォーターには、熊本の風土や、歴史が大きく関係しています。
阿蘇の自然のめぐみ
阿蘇火山の4度にわたる大火砕流噴火によって厚く降り積もった火砕流で、熊本の大地はできあがりました。
この地層はすきまが多く、水が浸透しやすい特徴を持っていて、100m以上の厚さで広く分布しています。
そのため熊本地域に降った雨は地下水になりやすく、地下に豊富で良質な水が蓄えられます。
阿蘇山によって「世界に誇る地下水都市・熊本」の土台ができあがったのです。
降雨の多さ
日本の平均降水量は年間 約1,700mmですが、熊本地域では約2,000mm、阿蘇山にいたっては3,000mmもの降水量があります。
その中の約3分の1は、田畑や森林、草原から地下の火砕流堆積物に染み込んでいきます。
地層の間を縫うようにゆっくりゆっくりと流れ、長い歳月をかけて磨かれます。
その間、ミネラル分や炭酸分がバランスよく溶け込み、おいしくて体にやさしい天然水になるのです。
加藤清正公と地下水をつくる「かん養域」
熊本城を築いた加藤清正公。
多くの土木工事、治水・利水工事を手掛けたことでも有名で、今でも土木の神様、治水の神様として敬われています。
約430年前、肥後(ひご・熊本県の旧国名)に入国した清正公は、白川中流域(大津町・菊陽町など)に堰や用水路を築き、大規模な水田開発を行いました。
特に白川中流域の水田は、通常の5~10倍も水が浸透し、地元では「ザル田」と呼ばれるほどの土壌です。
水が浸透しやすい性質の土地に水田を開いていったので、大量の水が地下に浸透し、ますます地下水が豊富になりました。
3. 豊かな水を守るために
今回、「水の国」の由来についてご紹介しました。
現在、熊本では “ 天然のミネラルウォーターが流れ出る ” 恵まれた環境を守り伝えていくために、市町村の枠を越えて地下水保全の取組を実施しています。
水が美味しいということは、その水で作られたものや育ったものも美味しいということ。
熊本の歴史や風景に溶け込んだ水物語を思い出して、ぜひ熊本ゆかりの食べ物にも触れてみてくださいね。
参考資料
・世界に誇る地下水都市・熊本 / 熊本市の環境TOP / 熊本市ホームページ
・熊本の地下水がおいしいわけ~地下水ができて湧水するまでのしくみ – まっぷるトラベルガイド